マーケットの野菜売り

この写真はマダガスカル、ムララノクロムのマーケット内で野菜を売っている女性。農村地帯の中にある小さな町の市ですし、周辺の農家で聞くと「ムララノクロムの木曜市で生産物を売る」と答える人が非常に多いので、農家が持ってきた野菜を直接売る場所かと思っていました。

ムララノクロム市場の野菜売り

ここで、野菜を売っている女性に聞いてみると、どうも農家の人たちが売っているとは限らないことが明らかになってきました。もちろん、農家の人が直接売っているケースも多々ある一方で、この女性は販売に特化したベンダーで、農家から野菜を仕入れています。

野菜は農協が供給してくれるわけでもなく、また農家を回って仕入れるわけでもなく、どうやら市の日の早朝に農家が自分で作った野菜を持って来るのを、まとめて買い取り、それを小分けにして小売する、という商売のようです。

農家にしてみれば、多少売値は安くなるかもしれませんが、一日中市場にいる必要はなく、また、売れ残る心配もありません。早朝にまとめて代金を払ってもらえれば、自分が市場で必要なものをすぐに購入して帰ることができます。

農村開発の仕事をしている人の中には、小売商や卸商が農家からまとめ買いをしているのを見て「安く買いたたいている」「搾取している」と思い込んでいる人も結構います。もちろん、圧倒的な市場支配力があればそのようなこともおきますが、多くのケースでは、農家も小売商も win-win の関係になっています。

まとめて売ることができれば農家は自分で売るための時間を節約できます。現金を一括して手に入れることができます。売れ残りのリスクは農家ではなく、商品を買い取った業者がひきうけてくれます。

卸商や小売商は、まず現金を用意しなくてはいけないこと、売れ残りのリスクを自分が背負うこと、流通コストや市場の場所代を負担しなければいけないことなどと引き換えに、自分一人では精算できないくらいの量の産品を取引することにより、まとまった量の利益を得るチャンスを得ます。

市場価格と生産者価格との差を、全て農家の取り分にすれば…という考え方は、必ずしも合理的とは言えません。