米ぬかの使い道は?

マダガスカルの米ぬか販売

ムララノクロムの木曜市で精米した後の米ぬかを売っている二人の若い女性。聞いてみたら、同じ家族だそうですから、姉妹でしょうか。彼女たちの前におかれている大きな袋に入っている米ぬかは、右と左で色が違いますから、これも確認してみると、コメの品種が違う、ということ。これで複数の品種を栽培している農家があることがわかります。

さて、ではコメぬかを何のために売っているのか?ぬか漬けを作る?そんな習慣はマダガスカルにはありません。袋に入れて顔をこする…今の日本のお年寄り世代なら記憶があるかもしれませんが、そのような使い方もマダガスカルにはないようです。

彼女らが売っているぬかは、基本的には家畜や家禽の飼料、場合によっては養魚池にまく餌になるようです。農家で聞いてみると、豚や鶏、ガチョウなどには糠を与えている様子。自分の田んぼからの供給量で不足する場合には、飼料を買って来て与えています。

特に豚は成長が早く、子豚を購入してきて肥育すると3ヶ月あまりで80キロから100キロに育ちます。農家にとっては非常に利回りの良いビジネスですから、子豚の代金を払い、餌代にも投資をします。

ただし、ここで買われている豚はどうやら改良品種で、生産性が高い代わりに病気などに弱く、昨年も多くの村で豚が全滅したそうです。

マーケットの野菜売り

この写真はマダガスカル、ムララノクロムのマーケット内で野菜を売っている女性。農村地帯の中にある小さな町の市ですし、周辺の農家で聞くと「ムララノクロムの木曜市で生産物を売る」と答える人が非常に多いので、農家が持ってきた野菜を直接売る場所かと思っていました。

ムララノクロム市場の野菜売り

ここで、野菜を売っている女性に聞いてみると、どうも農家の人たちが売っているとは限らないことが明らかになってきました。もちろん、農家の人が直接売っているケースも多々ある一方で、この女性は販売に特化したベンダーで、農家から野菜を仕入れています。

野菜は農協が供給してくれるわけでもなく、また農家を回って仕入れるわけでもなく、どうやら市の日の早朝に農家が自分で作った野菜を持って来るのを、まとめて買い取り、それを小分けにして小売する、という商売のようです。

農家にしてみれば、多少売値は安くなるかもしれませんが、一日中市場にいる必要はなく、また、売れ残る心配もありません。早朝にまとめて代金を払ってもらえれば、自分が市場で必要なものをすぐに購入して帰ることができます。

農村開発の仕事をしている人の中には、小売商や卸商が農家からまとめ買いをしているのを見て「安く買いたたいている」「搾取している」と思い込んでいる人も結構います。もちろん、圧倒的な市場支配力があればそのようなこともおきますが、多くのケースでは、農家も小売商も win-win の関係になっています。

まとめて売ることができれば農家は自分で売るための時間を節約できます。現金を一括して手に入れることができます。売れ残りのリスクは農家ではなく、商品を買い取った業者がひきうけてくれます。

卸商や小売商は、まず現金を用意しなくてはいけないこと、売れ残りのリスクを自分が背負うこと、流通コストや市場の場所代を負担しなければいけないことなどと引き換えに、自分一人では精算できないくらいの量の産品を取引することにより、まとまった量の利益を得るチャンスを得ます。

市場価格と生産者価格との差を、全て農家の取り分にすれば…という考え方は、必ずしも合理的とは言えません。